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自分の免疫から体を守るには?(2010年4月2日)

自分の免疫系から自分の体を守る細胞の最適な数

私たちの体を病原体から守っている免疫系は、実は自分自身の体を攻撃する可能性も持っている。システム生命学府の佐伯さんは、自分の免疫系から自分の体を守る働きをする「制御性T細胞」の最適な数とその分布を明らかにした。

佐伯 晃一(システム生命学府)

免疫系とは、体内に侵入した病原性のウイルスや細菌などを認識し攻撃することで、私たちの体を守る仕組みである。免疫系にはたくさんの種類の細胞が関わっており、自分自身の正常な細胞と病原体を区別して認識する細胞、病原体に攻撃する細胞などそれぞれに役割を分担している。

その中でも、病原体を認識し攻撃を指示する役割を持っているのがヘルパーT細胞である。しかしヘルパーT細胞のなかには、自分自身の正常な細胞に対して攻撃を指示するものが紛れ込んでいる。正常な細胞に過剰な攻撃が加えられると、自己免疫疾患と呼ばれる重大な病気を引き起こしてしまう。これを防ぐため哺乳類には、「制御性T細胞」と呼ばれる細胞が存在している。

fig1-20100402

制御性T細胞というこの特殊な細胞は、自分自身の正常な細胞を認識し、ヘルパーT細胞の働きを抑えることができる。しかしその反面、病原体への攻撃やガン細胞の除去などの免疫系の重要な機能を低下させる場合もある。制御性T細胞が少なすぎると、自分の免疫で正常な細胞を攻撃してしまうが、制御性T細胞が多すぎると病原体から自分の体を守れないため、多すぎず少なすぎない適切な数の制御性T細胞が必要である。

佐伯さんはヘルパーT細胞の働きを抑えるメリット(自己免疫疾患の抑制)とデメリット(正常な免疫の働きの低下)を考慮して、体内でどれだけ制御性T細胞を作ったら良いか計算を行った。その結果、自分の正常な細胞を攻撃してしまうヘルパーT細胞の割合が高い場合や、自分の体を間違えて攻撃すると非常にダメージが大きい場合に、多くの制御性T細胞が必要であることが分かった。また、間接リウマチで見られるようにヘルパーT細胞が体全体で自分の体を攻撃する場合と、特定の臓器などを攻撃する場合では、制御性T細胞の最適な数が異なることが明らかになった (下図参照)。

fig2-20100402
図:自己抗原とは、ヘルパーT細胞が攻撃を命令してしまう自分の体由来のタンパク質。 q ( 0 ≤ q ≤ 1 ) が小さいほどある特定の部位に自己抗原が集中していることを示す。

佐伯さんは、「制御性T細胞が自分の体のどのような抗原に反応するのか、またどうやって形成されるのかを明らかにする上で、このような理論研究が重要になるだろう」と話す。

より詳しく知りたい方は・・・
タイトル
Optimal number of regulatory T cells ( Abstract )
著者
Koichi Saeki, Yoh Iwasa
雑誌名
Journal of Theoretical Biology, vol 263, p. 210-218
研究室HP
数理生物学研究室